OUTBOXに使用されているフレームのメーカーELIXXIRとは?

ELIXXIR USA(エリクサー)は1982年に世界で最初に自転車フレーム用シームレスチタニウムチュービングを開発し、その製造技術を確立させたメーカーです。
現在のアメリカで数多くのチタニウムフレームファクトリーが存在し、チタニウムフレームがカスタムフレームの最高峰に君臨しているのは、エリクサーがそれまでクロモリチューブを使用していたフレームファクトリーにチタニウムチューブの供給とその溶接技術指導を行ったことがきっかけとなります。

ELIXXIR TITANIUM TUBING について
エリクサーフレームチュービングには、数あるチタニウムマテリアルの中から世界最大・民間・非営利の国際標準化・規格設定機関であるASTM[*1]に合致し、ボーイング社への納入実績もある最高品質のGrade9 (Ti-3AI-2.5V) チタン合金が使用されています。
エリクサーのチタニウムチュービングは2年間エイジング[*2]された高品質チタニウムインゴットから直接製作されたビレット[*3]からGrade9のシームレスチュービングを正確な含量と規格で製作供給しています。
特に、ダブルバテッドとトリプルバテッドのシームレスチュービング加工技術は世界でエリクサーのみが保有する技術です。
次の表はASTM規格のGrade1~9までのチタニウムマテリアルの特性を現しています。
TITANIUM GRADES
*ASTM
GRADE
ALLOY
COMPOSITION
MINIMUM
TENSILE STRENGTH
(KSI)
MINIMUM
YIELD STRENGTH
(KSI)
ELASTIC
MODULUS
(PSI-106)
1Unalloyed Ti352514.9
2Unalloyed Ti504014.9
3Unalloyed Ti655514.9
4Unalloyed Ti807015
5Ti-6Al-4.0V13012016.4
6Ti-5Al-2.5Sn12011516
7Ti-0.15Pd504014.9
9Ti-3Al-2.5V907013.1
  
Grade9 は Tensile Strength (引張強度) とYield Strength (降伏強度・耐力ともいわれる *塑性変形を起こさずに、材料に生じさせることのできる応力の値) が優れています。
現在のシームレスチューブ製作技術で製造できる最も高強度のチタニウム合金はGrade9であり、Grade9以外はフレームに不適もしくは高強度であってもシームレスチューブへの加工が不可能です。

ELIXXIRも過去には純チタニウムベースのGrade1~4を利用してフレーム製作を試みましたが、結果的にすべて失敗に終わっています。
理由は前表で示すように引張強度と降伏強度が低く弾性係数が高いため、外部からの衝撃に弱く、容易く亀裂が入ってしまいます。

Grade9はGrade1,2,3,4,7より低いElastic Modulus (縦弾性係数 *ヤング率ともいわれ材料が加えた力により変形しても元に戻ろうとする性質である弾性を表す値) を持っていて、外部からの衝撃吸収に優れている。
また、引張強度と降伏強度のバランスが良く、フレームに最適のバランスが維持できます。

弾性係数が高ければ引張強度と降伏強度ともに高いレベルにないといけません。この条件を満たしているのはGrade5[*4]ですが、圧延加工が非常に困難で現在の技術ではシームレスバテッドチューブへの加工は不可能です。
Grade5は切削による加工が容易く高強度であるため、フレームエンド、BBシェル、ケーブルストッパーなどの材料に使用しています。
注 釈:
*1.ASTM・・・アメリカ材料試験協会規格American Society for Testing and Materials。
*2.エイジング・・・時効性合金であるチタニウム合金は自然時効させることで機械的性質がより改善される。
*3.ビレット・・・押出し加工用に金属塊を鍛造または圧延によって加工して出来た半製品のこと。
*4.Grade5・・・Ti-6Al-4V合金。この合金でのシームレスバテッドチューブの製作は2015年時点では成功例はない。電縫管製法(シート材料を溶接によってチューブ状に縫い合わせる手法)による製作は行われている。
TITANIUM SEAMLESS BUTTED TUBEについて
シームレスチタニウムチュービングを技術面から説明すると、以下のように4つの方式にわかれます。

図1 内部を加工してないチューブ (DRAWN TUBE)

図2 内部を加工したチューブ(MANDREL DRAWN TUBE)

図3 内部を2段に加工したチューブ(DOUBLE BUTTED DRAWN TUBE)

図4 内径を3段階に加工したチューブ(TRIPLE/OUTER BUTTED DRAWN TUBE)

図1は内部をまったく加工してないチュービングです。
一般的に廉価なチタニウムフレームには再生チタニウム、または図1のように内部を加工してないチュービングが使用されています。
チタニウムフレームそのものは安いが、アルミニウムフレームより上下の動きが激しくなり、寿命が短く、時間が経つにつれ加速がしにくくなります。

図2、図3、図4はチュービングの内部へ鋼鉄でできた棒状のもの(マンドレル)を表面から圧力を加えながら挿入して加工します。
図2よりは図3のほうが加工は難しく、図3よりは図4が加工は更に難しくなります。

また、この加工により、図1の内面に発生している海綿状組織を消してチタニウムの密度を高めることができます。
図3と図4は加工が非常に難しい反面、フレームの重さを減らし弾性を高められ、走行時の加速もし易くなります。
ELIXXIRフレームの特徴
チタニウムフレームの市場価格は、US$1,000.00~~$8,000.00と幅広い価格で流通していますが、多くの消費者はその相違点を知らず、ただ知名度の高い会社の製品だから値段が高く、よい品質だと認識しがちです。
しかし、チタニウムフレームの価値を決定する重要なものは使用されるチュービングの品質と溶接方式、それから溶接後に正確なフレームアライメントを保持させる技術です。

ELIXXIRの製作したフレームと他社との相違点として次のような特徴が掲げられます。

  1. 生産されたチタニウムチュービングの中から60%だけを使用する。(左右20%は使用しない)
  2. 同一サイズのフレームを基準として、最も軽量である。
  3. すべてのチタニウムフレームにDOUBLE及びTRIPLE BUTTEDを使用しています。
  4. 張力(TENSILE)と圧力(YIELD)、及び弾性(ELASTIC)の理想的な比率を維持したチュービングです。
  5. Double Welding:(2重溶接)初期の一次溶接は、チタニウムチューブをカットするとチタニウムの断面が鋸の刃状になることを利用し、溶接棒を使わずチューブとチューブを溶接する。それから溶接棒を使い、チューブとチューブを溶接する二重溶接を行うことによって溶接部位が非常に丈夫になります。
  6. Normalizing (焼きならしによる調質): 溶接を行うとチタニウムは、溶接された部分とチュービングの特性が若干変化して変形します。これを防ぐために溶接後、一定の時間内にフレームを焼きならしすることによりチタニウムフレーム全体の特性を一定にして強度と延性を高めることができます。
  7. Polishing(ポリッシュ加工) & Burnishing(バニシ加工): 完成したフレームは、フレームの製作過程で発生した傷と表面についた不純物を除去して表面の改質と疲労強度の向上のためフレーム全体をポリッシュとバニシ加工しています。この加工により外部からの不純物(塩分、Gas、化学薬品)などがチューブに浸透することを妨げます。